Alex Fakso,『Heavy Metal』, Damiani,(2007)
英写真家Alex Faksoがグラフィティに興じる若者を追いかけたスナップ。深夜の車両基地に忍び込み素早く作業をする様子をスリリングに見せていく。塀を乗り越えたりマンホールから顔を覗かせたりしているところは国境線の突破を試みる密入国者のようだ。
本書の特徴はなんといっても全編にわたり対角魚眼レンズで撮影されているところ。若者に密着しつつペイントされていく車両など周辺を描写するのにこれほど効果的なレンズはない。というか他にこれほどうまく対角魚眼を使いこなしている例を見たことがない。
アパレルメーカの基金を得たりで予算が潤沢であったのか製本もいい。写真も面白いし本の作りもしっかりしているのに古書市場での価格は驚くほど安い(2017年初め現在)。部数が多めで市場でだぶついていたりしているのかしれない。手に入れるなら今が狙い目。
魚眼レンズで撮られた作品で印象に残っているのは、奈良原一高さんの「ヨーロッパ・静止した時間」、「ブロードウェイ」、鈴木志郎「眉宇の半球」あたり。特に「眉宇の半球」は魚眼レンズで日常を切り取り記録するという他に類をみない怪著なのであるが、市場では人気がないようでどこでも安心の古本価格である。
対角魚眼レンズは文字どおり画面斜めの画角が180度に達するもので、焦点距離でいうと16-17mm前後の超広角レンズに相当するものである。実はこれくらいの超広角になると適度にタル型の歪曲を残してくれた方が撮りやすい(ラフに構えても4隅を引っ張られる感じがしない)というのがあるので、その方向に突き詰めていくと対角魚眼を使いこなすヒントがあるんじゃないかな。
関連リンク
SO BOOKSの本書紹介ページ https://sobooks.jp/books/70281
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