宮崎喜一『殉教の島 天草』,私家本,1992年頃?
私家版。天草というと海岸線まで迫る山、大小様々な島、漁港、隠れ切支丹。元のプリントからしてそうなのか特殊な印刷方法なのかちょっと分からないが、独特の風合い。高精細で暗部のトーンも良く出ている。
メインテーマである隠れ切支丹について、ありきたりに遺構を取材して回るようなものではなく、草に埋もれる十字架の刻まれた墓石、すり減ったマリア像の石彫、ベールをかぶってお祈りをするおばあさん、和洋折衷っぽい祭壇(仏壇の奥にマリア様の肖像)などなど、現代の人々の中に根付く信仰を坦々と捉えることによって、かつてそこが隠れ切支丹の里であったことを見せていく。
作者の宮崎さんは出版時地元市役所におつとめで連絡先まで記されている。経歴や肩書きからすると、地元のアマチュア写真界ではかなり名の知れた人だった様子。
手許にある私家本の中でも特に気に入っている一冊。10年くらい前に京成八幡駅前の古書店で購入、最近になって神保町でもう一冊見つけたのでそれも購入。地元熊本の古書店で8000円くらいの値段がついているけど、探している人がいればそれくらい出すんじゃないか。