山下寅彦『漂景』,ほんの森出版社,1997
日本各地の下町風景、というよりくたびれた街並みがカラーで収められている。写っている場所もさることながら、光の具合が実にいい。丁寧に時間をかけて撮られているのが伝わってくる。『レンズ汎神論』の飯田鉄さんあたりの写真が好きな人におすすめしたい。この時期に書籍の仕事で全国を回っていたようなので、出張で訪れたついでに自分の作品も作っておられたのではないか。
神保町の某古書店の店先の、日当たりのいいラックにつっこんであって、表紙には「500円」と書かれた黄色い値札が貼り付けてあった。いくら見切り品とはいえこんなラベルの貼り方はないだろうと憤りつつ大事に持って帰った。
とにかく知らない名前だったので、ネットでざっと検索すると近年は猫関係の写真集やカレンダーの仕事が好評のようだった。ただこういう本を出してるくらいだから、仕事に余裕ができたらシリアスな写真に戻ってくるのか、ひそかに撮りためているのか…と思っていたのだが。