2017年2月27日月曜日

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『One Billion Indians』Paolo Pellizzari

Paolo Pellizzari 『One Billion Indians』, 5 Continents Editions, 2006

 ベルギーの写真家Paolo Pellizzari によるインドのスナップ。全編レンズスイング式のパノラマカメラで撮っている。タイトルを「10億人のインディアン」としているように、インドにおける人種や文化の多様性を一枚の写真の中に表現しようという試みか。とにかく雑多なものが写り込んでいて面白い。

 インドの雑踏をぐるっと見回すようなアングルで撮られたものを見ていると、人間というのは地を這う動物なんだなあというか、宗教や人種が違うといっても地面にへばりつき、肩を寄せ合って生活するしかないということを改めて感じさせられる。…まあそういう個人の感想はともかく、絵柄の面白さは半端ないです。

 作者のPaolo Pellizzariはツールド・フランス、2002年のサッカーワールドカップなどを得意のパノラマカメラで撮影、多くの雑誌に写真を提供している。自転車レースもサッカーのようなグラウンドで行う球技も、左右に大きく展開した競技空間の中に、多くのドラマが同時並行で進行していく。こういう被写体こそレンズスイング式のパノラマカメラが得意とするものである。





















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2017年2月19日日曜日

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『Plates and Dishes: The Food and Faces of the Roadside Diner』Stephen Schacher

Stephen Schacher『Plates and Dishes: The Food and Faces of the Roadside Diner』, Princeton Architectural Press,  (2005)

 ニューヨーク、スイスを拠点に活動する写真家Stephan Schacherが、アメリカ全土のダイナーとそのカルチャーを記録した写真集。この企画を完遂するにあたって作者が自ら課したルールは行程中の食事はすべてダイナーでとること、出された料理とウェイトレスさんをすべて撮影するということの2点。特定の文化を網羅的に記録していくという手法は編集者っぽい感覚で、日本だと都築響一あたりがやりそうなネタである。
 
 料理はどれもおおざっぱでボリュームがある。ミントカラーのプラスチック皿やチェック柄のテーブルクロス、写真がグリーンかぶりしているものが多いことからして照明は蛍光灯。全米を回ってるのだからもう少しご当地メニューのようなものが見えてきそうなのだが、自分には判別はつかない。
 
 長距離トラックのドライバーが日常利用しているダイナーの料理となじみのウェイトレスさんを撮影するのと、通りすがりの旅行者が一件ずつ声をかけて撮影するのとでは、微妙に違ったものが撮れるんじゃないかと思いつつ、常連さんも一見さんも等しく受け入れて束の間の休息を提供してくれるのがダイナーの懐の深さである。
 
 逆に本来ファミリアであるはずのダイナーが、中に入った途端に賑やかな店内の会話が一瞬とまってこっちを睨まれるとか、逆にお客さんはいかれた感じの農夫ひとりでカウンターの奥で歌を歌っているとかみたいなシーンから始まると極上のホラーになる。スティーブン・キングとか、デビッド・リンチとかが好きそうなシチュエーションだ。

関連リンク
Stephen Schacher
作者のサイト http://www.platesanddishes.net/
photoeyeでの紹介ページ http://www.photoeye.com/bookstore/citation.cfm?Catalog=PP019





























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2017年2月15日水曜日

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『火车上的中国人』王福春

王福春『火车上的中国人』,上海锦绣文章出版社,2007

 「火車」とは中国語で列車のこと。ちなみに「汽車」は自動車の意味だ。本書は中国の列車の車内風景をスナップしたもの。同じような装丁で何冊が出ているシリーズの中の一冊で、紙質・印刷ともいまひとつ。もしかしたらオリジナルのもう少しいい装丁の本があるのかな。

 中国では今でも鉄道が長距離移動のメイン手段で、広い国土を何時間も、ときには何日もかけて移動することになる。道中は暇だし、中国人なので、周りの人とおしゃべりしたり、お湯をもらってカップ麺を作ったりして、思い思いの時間を過ごす。本書はそんな中国人の旅の横顔を記録し続けた王福春の仕事の集大成である。

 撮り始めた頃は街から街へ移動する人々の地域特性であったり、故郷へ錦を飾る人のノスタルジーであったり、同時代に生きる人々の風俗を記録するという側面が強かったのではないかと思うのだが、それを何年も続けているうちに急激に変貌を遂げる中国とそれに飲み込まれる人々の有り様をもアーカイブすることとなっている。素晴らしい仕事。

 作者の王福春は、元は中国の鉄道会社の職員で、広報の仕事でイラストなどを描いているうちに写真を撮り始め、1984年にはハルビン鉄道局の研究所専属のカメラマン、のち1998年に早期退職して現在のようなドキュメンタリの写真家となる。


関連サイト
中国画報の記事 日本語
http://www.chinapictorial.com.cn/jp/se/txt/2015-03/06/content_673674.htm
















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