2017年5月1日月曜日

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北井一夫『おてんき』



北井一夫『おてんき』宝島社刊、1994年、モノクロ。
 
 日本全国あちこちで小さな生き物を撮り歩いたもので「生き物歳時記」といった感じの写真集だ。北井一夫さんというと、最近では日本カメラの「ライカで散歩」シリーズ、それ以前は「村へ」「三里塚」などの社会派ドキュメンタリというイメージであり、こういうネイチャー系の写真集は異色であるといえる。ディープな北井ファンは必見。
 
 撮影した北井さんの苦労も相当だったらしく、撮影が終了してから本になるまで2年かかったこと、「特殊レンズ(魚眼とか超望遠とか)は使わない」北井さんが一眼レフ用のマクロと超望遠レンズを買ったこと、それでも慣れてくるとライカにビゾフレックス+65mmくらいでも撮れるようになったことなどが、後書きで縷々語られていて、興味深い。
 
 あと、この本の特徴は全編モノクロだということ。北井さんの写真だから当然であるとも言えるけど、ネイチャー系の写真集でカラーでないというのはなかなかの冒険であると思う。単に写真集としての見栄えの問題ではなく、そもそもヘビでもカエルでも、野生の動物は周囲の環境にカモフラージュするような色合いなので、何も考えずにモノクロで撮影するとどこに何がいるのか分からなくなってしまうのだ。おそらくは慎重なフレーミングと緻密なプリントワークが駆使されているはずで、モノクロでこういうものを撮るときの参考になる。
 
 ついつい撮影技法に目が向いてしまったけど、そういうのはどうでもいい話だ。ほのぼのとした写真と文章は眺めているだけで幸せな気分になる。ぶらっと小旅行に出かけたくなる。表紙のツバメの写真にぐっときた人におすすめ。 































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2017年4月24日月曜日

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『東京花嫁』島内浩一郎

島内浩一郎『東京花嫁』,アシェット婦人画報社,2005

 ブライダルフォトグラファー島内浩一郎さんが、結婚式の定番のカットの間に写された様々な表情を捉えた写真。アウトテイク集というより積極的にそういうカットも撮るようにしているようだ。とにかく、花嫁衣装の非日常性を単なるキッチュな面白さで消費することなく、その姿でそこに佇んでいる必然性であるとか、ちょっとした仕草から見える周囲の家族との関係とかを丁寧に写しこんでいる。

 テキストを読むと、元は広告写真がメインだったのが自分の作品作りのためにたまたま花嫁さんを写すようになったのがきっかけで、ブライダルの撮影が増えたようなことが書いてある。たしかにこういう写真の見ると自分も撮ってもらいたくなるだろうな。

 結婚式や七五三などのセレモニーの写真撮影は本人にとっては一生に一度の出来事であるが、決まりきった進行とド定番の衣装ということから、うまく撮れば撮るほど同じような写真になってしまう。皆が思い浮かべる花嫁像というのがあってそれに向けて衣装もシナリオも作り込んでいるわけだから、それをあえて崩して作品として仕上げるのは相当なスキルが必要。

 例えば、参列者が破顔一笑している集合写真も、全員がかしこまって写っている本番カットがあってこそで、それがないと単なる失敗写真にしかならないでしょう。結婚式のスナップなんて誰にでも撮れるなんて思ったら大間違いですよ。

作者のサイト http://www.shimauchi-photo.com/



























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